先日、東京藝術大学大学美術館で行われている「みろく ー終わりの彼方 弥勒の世界ー」展を見に行ってきました。2001年3月、過激派組織によって破壊されたアフガニスタン・バーミヤンの石窟寺院遺跡。既に喪われた世界遺産の一部ではありますが、技術の粋を集めた最先端の技法によって、20年の時を超え、今に甦っています。
この美しいアフガン・ブルーはアフガニスタンで産出されたラピス・ラズリを用いたものだそう。弥勒・マイトレーヤ・ミトラ・ミイロ…伝播する地域・文化・歴史とともにその呼び名を変えてゆく神の姿。各地域における描写の差異に着目しながら、多角的に触れることのできる展示となっています。
こちらは石窟の東大仏頭上に描かれていた『天翔ける太陽神』の一部。今回の展示では見る人の頭上いっぱいに広がるような配置となっており、ぐっと背を反らせて天井を仰ぎ見ていると、なんだか天空に吸い込まれていくような心地になります。
東西文化の汽水域とも言えるこの地ならではの特徴は、仏教にとどまらずギリシャやペルシャなど他の地域の神々がひとところに描かれ、融和と和合の様を示していること。当該の地域ならずとも混迷を極める現代において、はるか昔、玄奘三蔵がみたものがこうしてスーパークローン文化財として息を吹き返すその経過こそ、未来仏・弥勒の存在を証明してくれるかのようです。会期は今週末、10月10日まで。
鑑定のご依頼はこちらからどうぞ。